モバイルバッテリーの発火に備える火災保険と個人賠償責任保険

このコラムは一般的な情報をご提供するものであり、当サイトの保険のご加入をお勧めするものではありません。

モバイルバッテリーの発火に備える火災保険と個人賠償責任保険

スマートフォンは情報収集やコミュニケーションツールとして日常生活に欠かせないものになりました。さらに旅行先や外出先では、スマートフォンは決済、乗車券、地図、宿泊予約など、とても便利なツールになります。そのため、電池切れに備え、モバイルバッテリーを持ち歩いている人も多いでしょう。

一方で、最近はモバイルバッテリーから煙や炎が出て、住宅や交通機関などで火災になる事故が増えている、という報道も目にします。便利な道具だからこそ、製品の選び方や正しい使い方を知り、万一の損害に備えておくことが大切です。


急増するモバイルバッテリー火災

総務省消防庁によると、2025年に全国の消防機関が把握したリチウムイオン電池などからの火災は1,297件でした。2022年の601件から、わずか3年間で2倍を超えています。

製品別で最も多かったのがモバイルバッテリーです。2025年の出火件数は482件で、2024年の290件から約7割増加しました。2022年の122件と比べると、約4倍です。なお、この数字には、廃棄された電池を回収しているごみ収集車やごみ処理施設での火災は含まれていません。


<図表>出火件数上位製品の件数推移
出火件数上位製品の件数推移


<資料>消防庁予防課「リチウムイオン電池等から出火した火災の調査結果について(令和7年)」


また、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の調査では、リチウムイオン電池を搭載した製品の事故は、気温の上昇とともに増え、8月にピークを迎える傾向も示されています。夏の旅行やレジャーに持っていく際は、特に注意が必要です。


<図表>リチウムイオン電池搭載製品の月別の事故発生件数
リチウムイオン電池搭載製品の月別の事故発生件数


<資料>独立行政法人 製品評価技術基盤機構「『夏バテ(夏のバッテリー) 』にご注意を ~「リチウムイオン電池搭載製品」は3つのCで事故を防ぎましょう!~」

なぜ発火するのか

モバイルバッテリーには、小型でも多くの電気を蓄えられるリチウムイオン電池が使われています。電池の内部では、正極と負極がセパレーター(隔離膜)と呼ばれる薄い膜で隔てられています。ところが、落下や圧迫などで電池内部が損傷すると、正極と負極が直接つながる「内部短絡」が起こることがあります。

内部短絡によって急激に温度が上昇すると、電解液や可燃性ガスが反応し、発煙や発火につながります。この急激な異常発熱は「熱暴走」と呼ばれます。外からは小さな変形にしか見えなくても、内部では損傷が進んでいる可能性があります。

消防庁が2025年の火災のうち原因を特定できたものを調べたところ、モバイルバッテリーでは、落下などの外部衝撃が41件、高温下での使用・保管が23件、製品の欠陥が18件でした。このほか、分解や誤った充電方法による火災も確認されています。


<図表>令和7年 モバイルバッテリーの出火原因
令和7年 モバイルバッテリーの出火原因別の件数


<資料>消防庁予防課「リチウムイオン電池などから出火した火災の調査結果について(令和7年)」

事故を防ぐ商品の選び方・使い方

購入時には、まず本体にPSEマークが表示されているか確認しましょう。日本では、2019年2月以降、PSEマークのないモバイルバッテリーを販売することはできません。ただし、PSEマークは法令上の技術基準に適合していることを示すもので、事故が絶対に起きないことを保証するものではありません。


<図表>モバイルバッテリーに表示されるPSEマーク
PSEマーク


<資料>一般財団法人日本品質保証機構


次に販売会社の名称や連絡先、型番、取扱説明書が明確な製品を選ぶことも重要です。特にインターネットで購入する場合には、価格だけで判断せず、販売者に連絡が取れるか、製品情報が十分に掲載されているかを確認します。経済産業省は連絡が取れないモバイルバッテリー業者のリストを公表しているので購入する前に確認し、できるだけ該当業者は避けるようにしましょう。


製品安全4法における連絡不通事業者リスト

https://www.meti.go.jp/product_safety/consumer/pdf/renrakufutsujigyosya.pdf


また、購入後も、経済産業省やメーカーのウェブサイトでリコール情報を確認しましょう。NITEは、これらを含む事故防止策を「賢く選ぶ、丁寧に使う、正しく捨てる」という「3つのC」として呼びかけています。

使用中は、炎天下の自動車内や直射日光が当たる場所に放置しないこと。落としたり、重い荷物の下に入れたりしないことが基本です。布団や衣類の上など熱がこもる場所での充電も避け、できるだけ起きている時間に、異常がないか確認できる環境で充電します。

本体が膨らんでいる、変形している、異臭がする、以前より熱くなる、充電に異常に時間がかかるといった変化があれば、直ちに使用を中止しましょう。膨らんだ本体を押して元に戻そうとするのは大変危険です。不要になった製品は一般ごみに混ぜず、自治体やメーカーの回収方法を確認して処分しましょう。

飛行機や鉄道に持ち込む際のルール

飛行機では、モバイルバッテリーをスーツケースなどの預け入れ荷物に入れることはできません。必ず手荷物として機内に持ち込みましょう。

さらに、2026年4月24日から国内の航空輸送ルールが変更され、機内に持ち込めるモバイルバッテリーは、1人2個まで、1個当たり160Wh以下となりました。ネットショッピングの際には、モバイルバッテリーの容量は「mAh」で表示されていることも多く、Whの表示がない場合は、「mAh÷1,000×電圧(V)」で換算できます。例えば、電圧が3.7Vの製品では、160Whは約43,200mAhに相当します。ただし、電圧は製品によって異なるため、持ち込みの際には、本体に記載されたWh表示を確認するのが確実です。

また、機内でモバイルバッテリー本体を充電することも、モバイルバッテリーからスマートフォンなどへ充電することも禁止されています。利用する航空会社や渡航先によって追加の制限が設けられることもあるため、出発前に確認が必要です。

鉄道については、国土交通省が、膨張しているものや異常に高温になっているものは車内へ持ち込まないよう注意を呼びかけています。落下などで破損した製品も使用してはいけません。

発煙・発火したときの対処法

モバイルバッテリーから煙や炎、火花が噴き出しているときは、むやみに近づいてはいけません。まず大声で周囲の人に火災を知らせ、製品から離れて自分と周囲の人の安全を確保します。そのうえで119番に通報しましょう。駅や列車、飛行機、船などの交通機関では、速やかに係員や乗務員へ知らせ、その指示に従います。炎が大きい場合や周囲の物に燃え移っている場合など、自分での対処が難しいと感じたら、初期消火にこだわらず、直ちに避難してください。

火勢や火花が収まり、安全に対処できる状況であれば、モバイルバッテリーのような小型の製品に限り、消火器を使用するか、大量の水をかけて消火・冷却します。水をためたバケツに入れる方法もありますが、燃えている最中の製品を無理に移動させてはいけません。安全に行える場合に限って対処します。

リチウムイオン電池は、いったん炎が消えても内部に熱が残り、再び発火することがあります。消火後もむやみに触れたり、紙や布など燃えやすい物の近くに置いたりせず、消防隊の到着を待ちましょう。

自宅や家財の損害に備える火災保険

自宅でモバイルバッテリーから出火し、建物や家具、家電製品などが焼けた場合は、火災保険の「火災」による補償の対象となる可能性があります。

ただし、火災保険では「建物」と「家財」を分けて契約します。建物だけを保険の対象としている場合、家具や家電などの家財は補償されません。持ち家では建物と家財の両方、賃貸住宅では自分の家財が契約に含まれているか確認しましょう。

賃貸住宅で借りている部屋を焼損させ、家主に対する賠償責任を負った場合は、通常の個人賠償責任保険ではなく、火災保険に付帯する「借家人賠償責任特約」が関係することがあります。自分の家財、借りている部屋、周囲の人や物では、必要となる補償がそれぞれ異なります。

他人への損害に備える個人賠償責任保険

外出先でモバイルバッテリーが発火し、他人にやけどを負わせたり、店舗や交通機関の設備を損傷させたりして、所有者が法律上の損害賠償責任を負った場合には、個人賠償責任保険が補償の対象となる可能性があります。個人賠償責任保険は、火災保険、自動車保険、傷害保険などの特約として契約していることが多く、本人だけでなく、配偶者や同居の家族なども補償されるのが一般的です。

ただし、モバイルバッテリーが発火したからといって、必ず所有者に賠償責任が生じるわけではありません。正しく使用していたにもかかわらず製品の欠陥によって発火した場合には、製造会社や輸入会社の責任が問題になることもあります。また、被保険者が使用・管理している物への損害は補償されないことがあるため、ホテルの客室や借りたものなどの扱いは契約内容の確認が必要です。

旅行に持っていく前に保険を確認しよう

旅行の前には、モバイルバッテリーの容量や状態、交通機関のルールを確認するとともに、現在加入している保険も点検しておきましょう。

まず、火災保険や自動車保険に個人賠償責任特約が付いているか、海外での事故も補償されるか、保険金額はいくらかを確認します。すでに十分な補償があれば、同じ補償を重ねて契約する必要はありません。

補償がない場合や海外での補償が不足している場合には、国内旅行保険や海外旅行保険の賠償責任補償を検討します。国内旅行保険では特約により、海外旅行保険では商品内容により、旅行中の賠償責任を補償できます。ただし、ホテルの客室や借用品などが対象になるかは商品ごとに異なるのでチェックしましょう。

保険は、事故を起こさないための注意に代わるものではありません。どれほど注意していても事故を完全になくすことはできません。安全な製品を選び、正しく使い、万一の場合に備える。モバイルバッテリーを持ち運ぶときには、保険の補償内容も一緒に確認しておきたいものです。

情報提供: 家計の見直し相談センター(外部サイト)

ライタープロフィール

藤川太

ファイナンシャルプランナー。山口県出身。慶応義塾大学大学院理工学研究科を修了後、自動車会社で燃料電池自動車の研究開発に従事していたが、ファイナンシャルプランナーに転身し、「家計の見直し相談センター」で生命保険の見直しを中心とした個人向け相談サービスを展開している。同センターは2001年の設立以来30000世帯を超える相談を受けてきた。「分かりやすい、納得できる、利用しやすい」サービスを目指して活動中。 著書に『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』(プレジデント社)、『やっぱりサラリーマンは2度破産する』(朝日新書)などがある。

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