返品保険で不安解消!ファッション系ECの新常識

このコラムは一般的な情報をご提供するものであり、当サイトの保険のご加入をお勧めするものではありません。

返品保険で不安解消!ファッション系ECの新常識

私はネットショッピングを日常的に利用しますが、利用しにくい商品があります。それは洋服や靴といったファッションアイテムです。先日もテニスシューズを購入しようと通販サイトで物色しましたが、サイズの指定で不安になり断念してしまいました。若い人たちに聞くと、ファッションアイテムもネットで購入している人はたくさんいるようです。一方で私のように不安をかかえて、購入できない人もまだまだ多くいるはずです。ここにはどのような問題があるのでしょうか。


消費者向けEC市場の中で注目されるファッション系EC

経済産業省の統計調査「令和5年度電子商取引に関する市場調査」によると、日本国内の消費者向けの電子商取引(EC)の市場規模は24.8兆円にまで成長しました。大きな規模の市場に成長したように見えますが、わが国の個人消費全体から見ると1割にも満たない規模でもあります。実はまだまだ成長の余地が大きい市場です。



消費者向けECの今後の成長を左右するのは、特に市場規模の大きい物販系ECです。物販系商取引のEC化率は9.38%(2023年)とまだ10%にも到達していません。若い世代ではネットショッピングが当たり前になってきているので、意外な低さに驚く方が多いかもしれません。
分野別のEC化率を見ると、もはやネットショッピングが当たり前のようになった家電製品や書籍といった分野は40%以上のEC化率になっています。街中の書店や電気屋さんが減っていることからも、こうした現状が裏付けられます。一方で、食料品のように手に取って選んで買いたいものや、化粧品や医薬品のように説明を聞いて確認して買いたい商品はEC化率が低い傾向にあります。



これらの中でも、市場規模が大きく、成長が期待されているのが衣類や靴といったファッション系ECです。衣類や靴は、ネット上で画像やサイズを確認するだけでは、サイズや色が自分に合うのかどうか判断できないという難しさがあります。
もしも、サイズや色などが合わなければ自由に返品できる、と言う仕組みがあれば、自由に試着ができることになります。ネットでファッションアイテムを購入する際のリスクを小さくすることができますが、こんなことが成り立つのでしょうか。

ネットショッピングでも基本的に返品はできる

契約したものの後から不安になって契約を解除したい、というときのために、一定期間内であれば契約を解除することができる「クーリングオフ」という制度があります。こうした制度は特定商取引法に規定されていますが、クーリングオフができるのは法律で決められた書面を受け取ってから、訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入においては8日間以内、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引においては20日間以内と定められています。
ところが、このクーリングオフにはネットショッピングのような「通信販売」は含まれていません。ネットショッピングでは消費者側が販売者に対し能動的にアクセスして契約するものだからです。ネットショッピングではクーリングオフは適用されませんが、特定商取引法には「通信販売」においても、商品の引き渡しを受けた日から8日以内であれば、申し込みを撤回したり、解除したりすることができるという、クーリングオフに準じた制度が規定されています。つまり、通信販売でも商品が届いてから8日以内であれば「購入者が送料を負担して」返品することができます。
ただし、この規定には例外が設けられています。購入ページなどに一定のルールに基づいて「返品できません」「返品不可」などと書いてあれば、返品することができなくなります。商品が届いてから8日以内なのに「返品はできません」と言われたら、購入ページなどにルールに則った記載があるか確認してみるとよいでしょう。

購入前に必ず返品ポリシーを確認しておこう

このようにネットショッピングにおいても、契約を撤回して「返品」することはできなくはなさそうです。ただ、業者によっては返品できない、となると、相当慣れている人以外は安心して購入することはできません。
このような状況の中、むしろ「返品制度」のハードルを低くして使いやすくすることで顧客を集める事業者が登場し人気を集めています。返品に関する取り決めは、購入サイトに「返品・交換について」といった名称で返品ポリシーが定められていることが一般的です。事業者によっては返品期限を8日以内ではなくもっと長期に設定したり、返品時の送料を「無料」にするなど、より使いやすい返品制度を売りにする事業者が増えています。購入する前に必ず確認するとよいでしょう。サイズやイメージが違えば返品できる。返品の手間はかかるものの、気軽に返品できる安心感があればネットショッピングの最大の弱点も気にならないでしょう。
一方で、こうした返品制度を悪用する人たちも目立ち始めているようです。返品することを前提に注文するなど「モンスター返品者」と呼ばれ問題となっています。中にはネットショッピングで礼服を購入し、入学式や卒業式で着用してから返品する、といったかなり悪質な例もあるようです。こうした悪用事例の多くは詐欺や窃盗に該当する可能性がある行為です。あまりに悪用する人が多くなると、事業者としては返品制度そのものも見直す必要が出てくるでしょう。キチンと利用している人にも迷惑がかかる可能性のある悪質な行為です。ルールに従って利用しましょう。

送料がかかる場合でも送料をカバーできる保険が登場

通信販売での返品ポリシーは事業者によって内容が異なります。返品無料となっていなければ、返品はできても返品時の送料は購入者側の負担です。昨今の人手不足や物価高により、運賃や送料は高騰しています。返品送料を負担するとなると、気軽に返品することはできなくなるかもしれません。
こうした状況の中、ネットショッピングで購入したファッション系アイテムを返品する際に負担した送料を実費補償するという保険が登場しました。「サイズが合わなかった」「足にフィットしなかった」「色がイメージと違った」といった、あくまで自分都合での返品のみが補償の対象、という珍しい保険です。
返品時の送料を無料にできるのは大手事業者が中心になりますが、こうした保険が登場し広がれば中小事業者にもチャンスが到来するはずです。新しい保険の登場によって、今後のファッション系ECのさらなる成長に期待が集まります。

情報提供: 家計の見直し相談センター(外部サイト)

ライタープロフィール

藤川太

ファイナンシャルプランナー。山口県出身。慶応義塾大学大学院理工学研究科を修了後、自動車会社で燃料電池自動車の研究開発に従事していたが、ファイナンシャルプランナーに転身し、「家計の見直し相談センター」で生命保険の見直しを中心とした個人向け相談サービスを展開している。同センターは2001年の設立以来30000世帯を超える相談を受けてきた。「分かりやすい、納得できる、利用しやすい」サービスを目指して活動中。 著書に『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』(プレジデント社)、『やっぱりサラリーマンは2度破産する』(朝日新書)などがある。

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