賃貸火災保険契約で大切な4つのチェックポイント

このコラムは一般的な情報をご提供するものであり、当サイトの保険のご加入をお勧めするものではありません。

賃貸火災保険契約で大切な4つのチェックポイント

アパートなどの賃貸住宅を借りる際には、一般的に火災保険に加入することが条件になっています。「火災保険は建物のオーナーが入るべきものなのに、なぜ加入しなくてはならないのか」と感じている人もいるようです。確かに加入するには保険料もかかります。ただでさえ入居時には敷金・礼金・家賃だけでなく仲介手数料や引っ越し代など、まとまったお金がかかるので、少しでも負担を少なくしたいものです。どうして部屋の借主が火災保険に加入しなくてはならないのでしょうか。

部屋を借りる時にも火災保険加入は必須

まず、どうしても火災保険への加入に納得できないなら、火災保険への加入を条件としていない部屋を探すことです。ただし、そうした物件は見つからないかもしれません。なぜなら、火災保険加入が契約条件となっているのは、一般的に法令違反ではなく個別の契約事項と考えられており、ちゃんとした理由があるからです。

賃貸契約時の火災保険は「火災保険(家財補償)」「借家人賠償責任保険」「個人賠償責任保険」の3つの補償が基本セットになっています。火災保険に加入していれば火事になっても大体大丈夫と思うかもしれませんが、火災保険だけではカバーできないことが少なくありません。

特に賃貸住宅に住んでいれば、万一のときには自分の部屋に被害が出るだけでは済まないかもしれません。たとえば火災が出れば「大家さん所有の建物が焼けた」「隣室にも被害が出た」と自分以外の人へ迷惑をかけることも想定しておかなければなりません。

基本補償の一つ目「火災保険」は、火災や自然災害によって被った損害に対する補償です。さらに、建物は自分の所有物ではないので、借りた部屋の中にある「契約者自身の財物(家財など)」に限って加入します。家財にかける火災保険は「家財補償」とも言われます。

たとえば、自室内で調理中にボヤを起こしてしまったとしましょう。その結果、室内の家具や家電が焦げてしまったら、契約している火災保険の家財補償から保険金を受け取れる可能性が高いでしょう。しかし、そのボヤで天井や壁など建物に被害が出た場合、どうなるのでしょうか。

建物は大家の所有物ですから、火を出した借主は大家に対して損害賠償責任を負うことになります。一般的な火災保険の家財補償ではカバーされません。また、大家が加入している火災保険から大家に対し保険金が支払われたとしても、その保険金を支払った保険会社から火を出した入居者に費用の請求がくるはずです。

日本には「失火責任法」という法律があり、「重大な過失」がない限り火災によって他人に損害を与えても損害賠償の責任は負わなくてよい、という原則があります。この法律をそのまま読むと、このボヤのケースでも損害賠償責任に問われないように見えます。ところが、失火責任法によって問われないのは不注意による失火の責任であって、大家との間で結んだ契約上の責任は消えません。入居者と大家の間で結んだ賃貸借契約書には「原状回復義務」が定められます。そのため部屋を損傷した場合には、修繕費を負担する責任が残ります。だからこそ、部屋を借りる際に加入する火災保険には「借家人賠償責任保険」を付帯することが条件となっています。

最後に、賃貸用の火災保険にはもうひとつ、非常に重要な補償があります。それが「個人賠償責任保険」です。日常生活で偶然の事故によって他人の身体や財物に損害を与えてしまい損害賠償責任を問われたときに助けてくれる保険です。たとえば、洗濯機のホースが外れ、下の階にまで水が漏れてしまい水浸しになってしまったといったケースを考えてみましょう。床や天井、壁のクロスなどの損害は大家の所有物なので借家人賠償責任保険の対象となる可能性が高いですが、下の階の部屋の中の家具、家電、衣類などの損害は「個人賠償責任保険」の対象となります。

このように部屋を借りていればいかにもありそうなケースで助けてもらえるよう「火災保険(家財補償)」「借家人賠償責任保険」「個人賠償責任保険」の3点セットの保険に加入しなくてはならないのです。

賃貸契約時の火災保険は実は選ぶことができる

賃貸住宅の契約をする際には「この火災保険に加入してください」と不動産会社から案内されるはずです。そして言われるがまま契約しています。不動産会社によっては「指定以外の保険では契約できない」と説明をするケースもありますが、実は借主側が火災保険を選択することができます。そのことを知ったうえで、提示された保険の内容を精査し、他の火災保険と比較検討しましょう。

不動産会社が指定する火災保険は、保険料が2年間で15,000〜20,000円程度が一般的です。1年あたりにすると7,500~10,000円程度。ところが、ネット型保険やダイレクト系の保険会社の火災保険には、同等の補償内容で年間3,000〜5,000円程度のものも見られます。月あたりにすると1,000円以下の保険料の話なので、そのまま気にせず契約してしまいそうですが、少しでも安くしたいですね。

比較検討する際には、まずは不動産会社に火災保険の条件を確認しましょう。一般的には借家人賠償責任保険の保険金額が1000万円以上といった形で条件が決まっているはずです。ネット系やダイレクト系の保険会社では、自分で補償内容をカスタマイズできることが一般的です。確認した条件さえ満たすようにしておけば、他の補償は自分なりにカスタマイズして設計することが可能です。

自分で設計する際の補償額の目安は

部屋を借りる際の火災保険を比較検討する際には、以下の4点を重点的にチェックしましょう。


① 火災保険の家財補償

家具、家電、衣類など、居住者の持ち物が損害を受けた場合の補償です。一人暮らしだとそれほど家財は持っていないからと低く設定しがちですが、単身者なら300〜500万円、ファミリー世帯なら1,000万円程度が目安です。自分の持ち物の価値に合っているかを考えて設定しましょう。

② 借家人賠償責任保険

不動産会社に借家人賠償責任保険の保険金額に条件があるか確認し、条件を満たすことが必要です。特に条件がなければ2000万円程度を目安に設定しましょう。

③ 個人賠償責任保険

隣室や下階への被害も補償の対象になるかどうか確認しましょう。補償金額は1億円以上を目安にするといいでしょう。

④ 免責金額や補償範囲

それぞれの補償には免責金額が設定されていることがあります。補償の対象となる場合でも免責金額までは自己負担になります。ですから免責金額が高いほど保険料は安くなりますが、被害が小さすぎると補償が受けられないことも出てきます。また、風災、水災、水漏れ、盗難などの補償も付帯されているか、補償の範囲も確認しておきましょう。


このように部屋を借りるときの火災保険は、加入しておかないと自分自身が困る可能性があるものです。自分自身で火を出してしまった時というよりも、大家や隣人などの他人に損害を与えてしまったときのための保険と言ってもいいかもしれません。

とは言え、保険は加入しても使う可能性は小さく、万が一の時のために加入するものです。だからこそ、必要な備えはきちんとしつつ、無駄なコストは省くことが大切です。引っ越し前のタイミングだけでなく、2年ごとの火災保険の更新のタイミングは、保険を選ぶチャンスです。インターネットを使えば自分で手軽に賃貸住宅用の火災保険の見積りができます。不動産会社に勧められた火災保険と比較検討してみましょう。

情報提供: 家計の見直し相談センター(外部サイト)

ライタープロフィール

藤川太

ファイナンシャルプランナー。山口県出身。慶応義塾大学大学院理工学研究科を修了後、自動車会社で燃料電池自動車の研究開発に従事していたが、ファイナンシャルプランナーに転身し、「家計の見直し相談センター」で生命保険の見直しを中心とした個人向け相談サービスを展開している。同センターは2001年の設立以来30000世帯を超える相談を受けてきた。「分かりやすい、納得できる、利用しやすい」サービスを目指して活動中。 著書に『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』(プレジデント社)、『やっぱりサラリーマンは2度破産する』(朝日新書)などがある。

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