医療費負担を減らすヒント:医療保険制度改革と医療費控除

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医療費負担を減らすヒント:医療保険制度改革と医療費控除

今年も確定申告のシーズンがやってきました。会社員の方であれば、確定申告には興味がないかもしれません。しかし、最近ではふるさと納税をしたり、住宅を購入したことで住宅ローン控除のために確定申告をする方も増えました。そして、昔から会社員でも確定申告して節税できることが知られているのが医療費控除です。一般的な所得の方であれば、医療費が年間10万円以上かかった場合に申告するメリットが出てきます。ただ、この年間10万円以上というハードルがなかなか高く、これまで使ったことがない方が多いはず。ところが、最近の医療保険制度改革の流れを見ていると、どうやら今後は医療費控除に注目した方がよさそうなのです。


急速に進む医療保険制度改革

昨年3月7日、当時の石破首相は8月に実施する予定の高額療養費制度の見直しを一旦見送りとし、同年秋にもう一度議論することにしたことがニュースになりました。高額療養費とは公的医療保険が適用される治療を受け、その医療費の自己負担が一定額以上になった場合に超えた負担部分を公的医療保険が持ってくれる、というありがたい仕組みです。この一定額のラインは所得に応じて定められ、所得が高いほど負担が重くなるように設計されています。

わが国では少子高齢化が進んでいるのはご存じの通りです。医療費のデータを確認すると、高齢な方ほど病院で治療を受ける確率が高くなり、一人当たりにかかる医療費も高くなる傾向があります。また、医療技術や医薬品がどんどん高度化、高額化しています。こうした原因から、国民医療費の増加傾向が止まらず、私たちの健康を支える公的医療保険制度の財政収支が厳しさを増しています。大切な公的医療保険制度を維持するために、保険料を上げ収入を増やすか、給付を削減し支出を減らすか、といった議論が行われてきました。

社会保険料は現役世代が中心に負担していますが、物価高の時代に入り私たちの生活は厳しさを増しています。さらに社会保険料の負担が増えると、多くの方の生活が圧迫されてしまうでしょう。これでは経済に活力は生まれません。

そこで現在の議論の中心は「公的医療保険の給付をいかに削減するか」に集中しています。ただ、給付を減らすことで医療費の負担が高額になると、経済的な理由から治療をあきらめる人も出てくるかもしれません。無駄があるのであればなくす努力をすべきですが、本当に困っている方に配慮することが重要です。

昨年12月25日の社会保障審議会医療保険部会において「高額療養費制度の見直し」と「OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し」の2つのテーマについて議論された内容が公表されています。それぞれの注目ポイントを見ていきましょう。

高額療養費引き上げはどうなった?

まずは昨年(2025年)8月の引き上げが見送られた高額療養費の限度額引き上げについて、その後の動きを見ていきましょう。一度見送られたと言っても、限度額を引き上げる方針に変わりは見られません。このままの流れで行くと今年(2026年)8月には限度額の引き上げが実施されるでしょう。そして当初から予定されている所得区分の細分化も2027年8月~実施される見通しです。

一度見送られたのには理由がありました。負担する能力のある人には負担してもらうという基本は理解できるものの、長期的な治療が必要な方や世帯構成的、経済的に負担が厳しい方への配慮が必要、ということです。その答えとして、以前の議論では出てこなかった「年間上限」が導入される見込みとなっています。これにより過度に負担が増えることがなくなりそうですし、長期的な療養をしている人には逆に負担が軽くなる人が多くなりそうです。一方で、所得の高い人は負担する能力が高いとみられているので、全般的に負担が重くなりそうです。今後は所得が低くても金融資産をたくさん持っている人などにも負担を求めるのか、議論は続きそうです。


令和8(2026)年8月~ 限度額引き上げ+年間上限の新設+70歳以上外来特例引き上げ

令和9(2027)年8月~ 所得区分の細分化+限度額の引き上げ+70歳以上外来特例引き上げ


<図表>高額療養費制度の見直しについて

高額療養費制度の見直し内容

資料:第209回社会保障審議会医療保険部会 第9回高額療養費制度の在り方に関する専門委員会 配布資料より

湿布や花粉症薬の自己負担が増える!?

次に「OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直し」の議論を見てみましょう。OTC医薬品とは薬局で処方箋なしで購入することができる医薬品のことです。Over The Counterの頭文字を取ってOTCと言われます。

OTC医薬品で対応できる症状でも病院に行って処方箋を出してもらい医療用医薬品を入手すると、薬局でOTC医薬品を購入するよりずっと安く済むことが多くあります。公的医療保険で大部分を負担してくれるからです。負担感が小さいせいか、使い切れないほどの湿布や薬を出してもらうケースも見られ、こうした不公平感や無駄と思われる行為が問題となっています。

そこで、審議会では77成分、約1100品目の医薬品を対象として、これらの医薬品を病院で処方する場合、別途の保険外負担(特別の料金)を求める新しい仕組みを創設するようです。対象となる医薬品はOTC医薬品と成分・投与経路が同一で、1日最大用量が異ならない医療用医薬品を機械的に選択したとしています。リストを見ると湿布や鎮痛剤、花粉症の薬など、よく使われる身近な薬が多いことがわかります。多くの方に影響が出そうな見直しです。


<図表>特別料金の対象となる医薬品の成分一覧(案)

特別料金の対象となる医薬品の成分一覧(案)

資料:第209回社会保障審議会医療保険部会 第9回高額療養費制度の在り方に関する専門委員会 配布資料より


気になる特別の料金は薬剤料の1/4(25%)にあたる金額です。残りの3/4は1~3割(年齢などの属性による)の定率自己負担です。全額自己負担とする案もあったようなので、法律改正が必要な見直しでもあり、急激な負担増に配慮し理解を求める形です。ただ、特別な料金を取れる法律が一度通れば、割合は随時見直しができます。いずれ、気軽に湿布や花粉症の薬を出してもらえない時代が来そうです。この見直しは法律改正が前提となりますが、2026年中の実施が予定されています。


<図表>

特別の料金は薬剤料の1/4(25%)、残りの3/4は定率自己負担

資料:第209回社会保障審議会医療保険部会 第9回高額療養費制度の在り方に関する専門委員会 配布資料より

医療費の自己負担増で医療費控除に注目が集まる

このように現在議論されているのは、公的医療保険の給付が減る、つまり負担が増える方向が基本です。現在は年間10万円以上の医療費は使っていないというご家庭でも、こうした見直しが進んでいけばラインを超えやすくなるはず。ただ、負担が増えるからと言っても、私たちの健康のことなので受診控えは避けたいところです。

少しでも負担を減らしたいなら、1年間にかかった医療費をまとめて医療費控除を確定申告し少しでも税金を節約することです。今年中にこうした見直しが実施される可能性が高まっています。医療費を支払ったら必ずレシートを保管して来年以降の確定申告に備えるようにしましょう。

情報提供: 家計の見直し相談センター(外部サイト)

ライタープロフィール

藤川太

ファイナンシャルプランナー。山口県出身。慶応義塾大学大学院理工学研究科を修了後、自動車会社で燃料電池自動車の研究開発に従事していたが、ファイナンシャルプランナーに転身し、「家計の見直し相談センター」で生命保険の見直しを中心とした個人向け相談サービスを展開している。同センターは2001年の設立以来30000世帯を超える相談を受けてきた。「分かりやすい、納得できる、利用しやすい」サービスを目指して活動中。 著書に『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』(プレジデント社)、『やっぱりサラリーマンは2度破産する』(朝日新書)などがある。

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