自転車保険に加入するのが当たり前の時代に

自転車保険に加入するのが当たり前の時代に

社会問題にもなった「あおり運転」などを厳罰化した改正道路交通法が2020年6月に施行されました。テレビ報道でも繰り返し報道された「あおり運転」は自動車によるものばかりですが、今回の法改正では自転車によるあおり運転も危険運転として規定されました。

自転車を運転することは自動車に比べ軽く考えられがちですが、自転車でも他人を死亡、障害状態にさせるような甚大な危害を与えることがあります。道路交通法上、自転車は軽車両として位置づけられ交通ルールを守ることが求められます。


自転車安全利用五則

自動車を運転するには、免許を取得する際に交通ルールを学びますが、自転車ではそうした免許も試験もありません。自転車にも様々な交通ルールが定められており、警察庁の交通対策本部は自転車を運転する際に守るべき重要な交通ルールを「自転車安全利用五則」として以下のようにまとめています。

(1)自転車は、車道が原則、歩道は例外
自転車は道路交通法上「軽車両」ですから、車道と歩道が区別されているならば車道を通行することが原則です。自転車も歩道を走ることが許されている区間がありますが、あくまで例外という位置づけです。

(2)車道は左側を通行
最近は車道に自転車専用レーンが設けられていることが多くなりました。自転車で車道を走る場合は、自動車と同様に道路の左側を通行しなければなりません。右側を通行している自転車をよく見ますが、道路を逆走していることになります。

(3)歩道は歩行者優先で、車道よりを徐行
自転車で歩道を通行する場合は、車道よりの部分を徐行することが原則です。歩道を自転車で通行することは例外ですので歩行者が優先。歩行者の通行を妨げるような場合は一時停止しなければなりません。

(4)安全ルールを守る
自転車にも安全ルールが定められています。たとえば、自動車同様に飲酒運転をしてはいけません。また、2人乗りや自転車の並走も禁止されています。夜間に自転車を運転するならライトを点灯させなくてはなりません。交通信号を守り、一時停止が必要な交差点では一時停止・安全確認をする必要があります。携帯電話やスマートフォンを操作しながら運転する「ながらスマホ」も禁止です。自転車でもこれらのルールを守らなければならないことを知らない人は多いようです。

(5)子供はヘルメットを着用
幼児や児童の保護者は、幼児や児童が自転車を運転するときだけでなく、幼児用座席に乗せる際にも乗車用ヘルメットをかぶらせるようにしましょう。

自転車の15つの危険運転

自転車も車両であり、交通ルールが定められていると言っても、事故を起こさない限り罰則はない、と思っている人も多いようです。2015年6月からは交通の危険を生じさせる恐れのある一定の違反行為(危険行為)を反復して行った自転車の運転者に対し、自転車運転者講習が実施されるようになりました。

自転車の危険行為を繰り返し、交通の危険防止が必要と認められる場合、都道府県公安委員会が自転車運転者に対し講習の受講命令を出します。自転車運転者講習の講習時間は3時間、講習手数料は6,000円(標準額)です。受講命令が出たのに受講しなかった場合は5万円以下の罰金となります。

では、自転車の危険運転とはどのようなものでしょうか。これまでの道路交通法では14項目の危険運転が規定されていましたが、15項目目としていわゆるあおり運転が「妨害運転」として加わりました。自転車で自動車の前にひょっこりと飛び出す行為を繰り返す事件がありましたが、この妨害運転に該当します。自転車だからと軽く考えて、危険運転をしてしまっている人は多いはずです。

1 信号無視
2 指定場所一時不停止等
3 遮断踏切立入り
4 通行禁止違反
5 歩行者用道路における車両の義務違反(徐行違反)
6 歩道通行時の通行方法違反
7 通行区分違反
8 路側帯通行時の歩行者の通行妨害
9 交差点安全進行義務違反等
10 交差点優先車妨害等
11 環状交差点安全進行義務違反等
12 制御装置(ブレーキ)不良自転車運転
13 安全運転義務違反
14 酒酔い運転
15 妨害運転(交通の危険のおそれ・著しい交通の危険)

自転車での重大事故の半数以上が若年者によるもの

自動車との事故であれば自転車はどちらかというと被害者側になることも多いでしょう。ところが、自転車による事故は自動車との事故だけではありません。自転車と歩行者の事故では、自転車は加害者となることが多くなります。

自転車と歩行者の事故のうち歩行者が死亡・重傷となった事故を調べると、半数以上が10代、20代の自転車運転者によるものであることが分かります。運転者が子供であっても重大事故の加害者になっています。一方で、死亡・重傷事故の被害者の半数以上が65歳以上となっています。

資料:警察庁HPより

広がる自転車保険への加入義務化

自動車に乗るなら自動車保険に加入するのは当たり前。これから新しく常識となると思われるのが、自転車に乗るなら自転車保険に加入すること。国土交通省も都道府県に対し条例等によって自転車損害賠償保険等への加入義務付けを要請しています。その動きを受け、全国に自転車保険への加入義務化の動きが広がっています。

2020年12月末現在では自転車保険への加入義務化を条例として制定しているのは19都府県と、3政令指定都市。自転車保険への加入を努力義務としているのが10道県です。表中の赤字の地域は2020年以降に新しく条例が制定された地域で、宮崎県、群馬県、宮崎県、千葉市、岡山市は2021年4月から、大分県は2021年6月から実施される予定です。

条例の種類 都道府県・政令指定都市
加入義務
(19都府県、3政令指定都市)
宮城県、山形県、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、静岡県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、愛媛県、福岡県、大分県宮崎県、鹿児島県、千葉市、名古屋市、岡山市
努力義務
(10道県)
北海道、茨城県、千葉県、富山県、和歌山県、鳥取県、徳島県、香川県、高知県、熊本県

損害賠償責任保険への加入は運転者の責務

自転車事故が発生し被害者が死亡したり、障害状態が残るような重大事故になれば9,000万円を超える損害賠償判決が出たケースも見られます。児童や未成年者が加害者であれば、その保護者が損害賠償責任を負う判決も出ました。このような巨額の賠償責任を負ってしまえば、被害者だけでなく加害者およびその家族の人生も狂ってしまいます。保険に加入していなければ、より悲惨な事態となることが分かるでしょう。

自転車保険は一般的に大きく2つの機能を持っています。一つは自転車運転者のケガによる入通院や死亡・障害状態に備える傷害保険。もう一つが他人に与えた損害に対する損害賠償責任を補償する損害賠償責任保険です。全国で広がっている自転車保険への加入義務化は、あくまで後者の損害賠償責任保険に対するものです。

損害賠償責任保険は「個人賠償責任保険」や「日常生活賠償責任保険」と言った名称で販売されています。自転車保険に新しく加入しなくても、すでに自動車保険や火災保険に加入しているのであれば、特約として付加しているケースが多く見られます。また、一般的に損害賠償責任保険は被保険者だけでなく、被保険者の配偶者、被保険者またはその配偶者の同居の親族、被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子生計を一にする家族全体が対象となります。何らかの形で保険に加入し、補償の対象となっているのであれば新たに加入する必要はありません。

加入していないなら、新たに加入を検討しましょう。加入義務化の広がりにより、多くの保険会社が自転車保険を販売しています。ただし、前述した通り多くの自転車保険は傷害保険と損害賠償責任保険のセット商品ですから、どうしても保険料が高くなりがちです。もしも、保険料負担を小さくしたいなら、すでに加入している自動車保険や火災保険に特約として損害賠償責任保険を付加するのも一つの手です。また、本サイトYahoo!保険の「ちょこっと保険」のように自由設計で保険に加入できるサイトがあります。月290円程度から上限1億円の損害賠償責任保険に加入することが可能です。

自転車保険への加入義務化に違反しても罰則があるわけではありません。それでも、自転車を運転するなら、車両の運転者です。ルールを守り、安全運転をするのはもちろん、運転する際には運転者の責務として損害賠償責任保険に加入しましょう。

情報提供: 家計の見直し相談センター

ライタープロフィール

藤川太

ファイナンシャルプランナー。山口県出身。慶応義塾大学大学院理工学研究科を修了後、自動車会社で燃料電池自動車の研究開発に従事していたが、ファイナンシャルプランナーに転身し、「家計の見直し相談センター」で生命保険の見直しを中心とした個人向け相談サービスを展開している。同センターは2001年の設立以来30000世帯を超える相談を受けてきた。「分かりやすい、納得できる、利用しやすい」サービスを目指して活動中。 著書に『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』(プレジデント社)、『やっぱりサラリーマンは2度破産する』(朝日新書)などがある。

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