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大雨が降ったらわが家はどうなるの?
梅雨が到来し、もうじき台風シーズンもやってきます。近年、「過去最大級」の台風や「〇年に一度」と言われるような豪雨災害が多いですね。年々、気候変動のブレ幅が大きくなる傾向が続いているようですし、大雨が降る天気予報を聞くたびに、洪水や土砂災害のリスクに敏感にならざるを得ません
過去10年大規模被害が毎年のように発生
過去10年を見るだけでも毎年のように大雨による災害が発生しています。2019年(令和元年)の台風被害は記憶に新しいでしょう。10月に関東地方に上陸した台風19号によって100名を超える死者が出るなど、関東・東北地方に甚大な被害をもたらしました。この年は9月にも台風15号が関東地方に上陸しました。ゴルフ練習場のポールがなぎ倒されたり、千葉県を中心に9万棟を超える住宅が被害を受けたことが報道されましたし、鮮明に覚えている人も多いでしょう。
2018年に発生した西日本豪雨は台風7号と梅雨前線等の影響によりもたらされました。被害は西日本が中心ですが、中部地方や北海道まで広範囲に被害が発生したことも特徴的な豪雨です。この豪雨では200名を超える人命が失われました。
このように、九州地方の被害が特に多いですが、北海道を含め日本全国で多くの人的被害が出ているとともに、数多くの住宅が被害を受けていることがわかります。
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水害ハザードマップの説明が義務付けられた
こうした豪雨災害の増加基調および大規模化の傾向を受け、国土交通省が動きました。2020年8月から不動産取引において「水害ハザードマップ」の説明が義務付けられたのです。
ハザードマップとは「自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図」のことです。1990年代から各自治体による整備が進められてきましたが、知名度はあまり上がっていませんでした。2011年の東日本大震災をきっかけに、人命を最優先に守る避難対策として注目を集めるようになりました。
私たちとしては、できるだけ災害リスクの少ない場所に住みたいところです。それなのに、このように重要な情報の説明が義務化されていなかったのか不思議に思うかもしれません。不動産の現場ではハザードマップで災害の危険性が高い場所にある物件とされてしまうと「価値が下がる」ため"評判の悪い"ツールでもあったのです。ある地域では自治体がハザードマップの策定について説明会を開いたところ「価値が下がったら、補償してくれるのか!」と住民の猛反対に遭ったそうです。やっとハザードマップが法律上の位置づけを得たので、今後多くの人が活用するようになることが予想されます。
不動産の売買・賃貸に関わらず宅地建物取引士が行う重要事項説明において、水害ハザードマップを提示して物件の位置を示し、水害リスクに関して説明することが義務付けられました。不動産取引をする際には、しっかりと説明してもらいましょう。
ハザードマップは市区町村が整備している
このハザードマップは不動産取引士に説明してもらうまでもなく、簡単に確認することができます。ハザードマップは各市区町村が整備しており、基本的には市区町村の役所で確認することができますが、市区町村のホームページ(HP)でも確認することができます。
今回説明が義務化されたのは「水害ハザードマップ」です。ハザードマップには様々な種類がありますが「洪水ハザードマップ」「内水氾濫ハザードマップ」「高潮ハザードマップ」「津波ハザードマップ」が「水害ハザードマップ」に該当します。その他、「土砂災害ハザードマップ」「地震ハザードマップ」などの種類があります。整備の状況は自治体によりますが、ほとんどの自治体で水害ハザードマップは整備が済んでいるようです。
図は世田谷区が整備した洪水・内水氾濫ハザードマップの一部です。このようなに水害リスクの高さを色分けして地図に示したものがハザードマップです。非常に分かりやすいのですが、地図が小さすぎて物件の位置が分かりにくいのが難点です。
<世田谷区洪水・内水氾濫ハザードマップ(多摩川洪水版)の一部> |
ハザードマップポータルサイトを利用しよう
国土交通省は日本全国の市区町村が公表しているハザードマップを取りまとめた「ハザードマップポータルサイト」を運営しています。調べたい住所を入力し、その地点に重ねたいハザードマップを選択することで災害リスクが一目で分かるようになっています。
調べられるハザードマップなどは以下の6種類のみですが、非常に便利なので使ってみましょう。
- ① 洪水(想定最大規模)
- ② 土砂災害
- ③ 高潮(想定最大規模)
- ④ 津波(想定最大規模)
- ⑤ 道路防災情報
- ⑥ 地形分類
<ハザードマップポータルサイト> |
火災保険の補償から水災を外す前に確認しよう
最近は加入条件を細かく設定できる火災保険が多くなっています。特に目立つのが「水災」による被害に対しては補償されないように設定するケースが目立ちます。火災保険の保険料は、保険会社ごとの差が生命保険のようには大きくないので比較検討する人があまりいません。ところが、この水災への補償を外すことができれば30%以上も保険料が安くなることがあるのです。これだけ安くなるのであれば、水災を補償対象から外したいと思うのが普通でしょう。
例えば、マンションの高層階に住んでいる人であれば、水災のリスクはなくはないものの小さいと言ってもいいでしょう。リスクが小さいなら、補償の対象から水災を外す選択は合理的と言えるでしょう。
戸建の場合であれば、水災リスクの大きさを調べたいところです。その場合は、水災ハザードマップを確認することが判断材料になるでしょう。ハザードマップで水災リスクの高い地域に住んでいることが分かれば、補償の対象から水災を外すべきではありません。また、あるハザードマップでリスクがほとんどないと分かっても、安心はできません。水災ハザードマップは特定の大きな河川が氾濫した場合を想定して作られているケースが多いからです。地域に張り巡らされている小さな河川は対象になっていないかもしれません。市区町村によっては過去の浸水の履歴のデータを公開していることもあります。いつ、どの場所で、どの程度の雨が降ることで、どのように浸水したかという履歴を調べることができます。戸建ての場合はこうした情報をできるだけ集めた上で、水災リスクを判断したいところです。
火災保険を柔軟に設計できるようになったことは歓迎すべきことです。ところが、保険料を節約する目的で必要な補償まで削ってしまうのは避けましょう。いざという時に役に立たない、のでは保険に入る意味がありません。不動産取引の重要事項説明の義務化によってメジャーな存在になりつつあるハザードマップですが、火災保険加入の判断材料としても有効活用してみましょう。