個人賠償責任保険はどんな時に役に立つ?

このコラムは一般的な情報をご提供するものであり、当サイトの保険のご加入をお勧めするものではありません。

個人賠償責任保険はどんな時に役に立つ?

全国の自治体で自転車保険への加入義務化が広がるとともに「個人賠償責任保険」への関心が広がっています。というのも、自転車保険の柱となる補償が「個人賠償責任保険」であり、他人にケガをさせたり、他人の所有物に損害を与えるなどした場合の、損害賠償義務に対し備える保険だからです。

自転車保険をキッカケとして加入した方は特に、この保険の広い補償範囲を知らない人が多いようです。せっかく加入して保険料を支払うのですから、どのような時にこの保険が役に立つのか知っておきましょう。


保険金が支払われる条件は意外に広い

保険の契約内容は契約前に渡される「約款」に規定されていますが、保険は内容が難しいと思われていますし、とても多くのことが記載されているせいか、残念ながら読む人はほとんどいません。

約款の内容は当然ながら保険会社によって少しずつ違いますが、個人賠償責任保険のような一般的な保険は多くの会社で似たような内容で販売しています。保険を選ぶ際にもっとも気になるのは、どんな時に役に立つのかということ。約款の記載内容を確認してみましょう。

他人の生命・身体や財物に対する損害

まずは個人賠償責任保険で保険金が支払われる基本パターンを見てみましょう。約款には一般的には以下のように書かれています。

日本国内または国外において

  • ①住宅の所有、使用または管理に起因する偶然な事故
  • ②被保険者の日常生活に起因する偶然な事故

に起因して

  • A.他人の生命または身体を害すること
  • B.他人の財物を損壊させること
  • C.電車やモノレールのような軌道上の乗用具が運行できなくなること

によって、被保険者が法律上の損害賠償責任を負うことによって被る損害に対して保険金を支払う。

この①と②のケースをそれぞれ具体的な例で見てみましょう。

①住宅の所有、使用または管理に起因する偶然な事故とは

たとえば、賃貸住宅に住んでいて、洗濯機のホースが外れ下の階の部屋にまで漏水。衣類や家具などが汚れてしまい階下の住人から賠償を求められたケースなど該当します。自転車保険とはまったく異なるイメージですが、こうした事故も対象になることを知っておきたいところです。

②被保険者の日常生活に起因する偶然な事故

日常生活に起因する偶然な事故はさまざまなパターンが考えられますので、A、B、Cそれぞれのパターンでどのようなケースがあるのか見てみましょう。

A.他人の生命または身体を害すること
自転車での事故が代表的な例です。自転車を運転中に人をひいてしまい、他人にケガをさせたり、死亡、障害状態になり、被害者から賠償を求められるケースが該当します。「人力」で動く車両や船舶の事故は対象となっていますので、自転車だけでなくキックボード(電動でないもの)や手こぎボートでの事故も対象です。
また、個人賠償責任保険の保険金支払い事例としてよく取り上げられる、ペットが通行人を噛んでしまいケガをさせてしまったというケースも該当します。
B.他人の財物を損壊させること
自転車で駐車中の車と接触しサイドミラーを壊してしまったというケースだけでなく、子供が蹴ったボールが自動車に当たってしまい傷をつけた、といったケースも該当します。原付バイクの操作を誤って車と接触したケースでは、人力で推進する車両ではないので対象となりません。
C. 電車やモノレールのような軌道上の乗用具が運行できなくなること
電車を止めてしまうと高額な損害賠償請求を受ける可能性があります。意外かもしれませんが、日常生活に起因する偶然な事故によって電車が止まった、と言う場合には、支払対象となる可能性が高いのです。混雑したホームで誤って転落してしまい、電車を止めてしまった、認知症の老人が電車を止めてしまった、それにより損害賠償請求を受けたというケースなどは対象となる可能性が高いでしょう。ただし、自殺のような故意で電車を止めてしまった場合には、保険金支払いの対象外となりますので注意しましょう。

他人から借りたものに対する損害賠償責任

ここ数年の新しい動きとして、他人から借りた物に対する損害賠償責任に対する補償がセットされる保険も増えてきました。ここでもある保険会社の約款の記載を確認してみましょう。

被保険者が管理する財物で以下を除く受託品が、日本国内または国外において生じた偶然な事故に起因して損壊または盗取されたことにより、被保険者が受託品について正当な管理を有する者に対し法律上の損害賠償責任義務を負うことにより被る損害に対して保険金が支払われる。

<除外される代表的な受託品>
①自動車・原付バイク、船舶、航空機、ゴーカートなど
②携帯電話やノートパソコンなどの携帯式電子事務機器および付属品
③預金証書や商品券、電子マネーなど
④クレジットカードやローンカードなど
⑤原稿や設計書、図案など
⑥動植物などの生物
⑦鉄道、船舶、航空機などのチケットや宿泊券、旅行券など
⑧通貨や小切手など
⑨貴金属、宝石、書画、骨董、美術品など
⑩不動産
⑪門、塀、垣、物置など
⑫データ、ソフトウェアなど
⑬ホテルや旅館など宿泊可能な施設内の動産
⑭価値が1個または1組で100万円を超える物

このように他人から借りた物やレンタル品が偶然な事故で壊れたり、盗まれてしまい、所有者に対し損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われるとなっています。たとえば、友達から借りたゲーム機を壊してしまった、盗まれてしまった、といったケースが支払い対象です。
この借りた物に対する補償は、そもそも補償がセットされているのか、セットされている場合は除外されるものリストがポイントです。会社によって内容が異なり、会社によってはゴルフ場敷地内におけるゴルフカートや、ホテルや旅館など宿泊可能な施設内の動産も補償の対象に入っている保険もあります。

保険金が支払われない場合

このように保険金が支払われるケースから見ていくと、かなり多様なケースで保険金支払いの対象になりそうに見えます。ただ、保険は支払われない場合も押さえておくと理解がしやすくなります。ただ、約款には支払われないケースとして、非常に多様な条件が記載されています。主なものだけを抜粋してみましょう。

以下のいずれかによって生じた損害は保険金の支払い対象外。

  • ①契約者や被保険者などの故意
  • ②戦争、武力行使、革命、内覧、武装反乱などの他、事変や暴動
  • ③地震、噴火、これらによる津波
  • ④仕事に関する損害賠償
  • ⑤航空機、船舶、車両の所有、使用または管理に起因する損害賠償(人力で動く船舶や車両についての損害賠償は支払い対象)
  • ⑥被保険者の心神喪失に起因する損害賠償

代表的な事例としては、故意による事故です。あくまで偶然な事故によって発生した損害賠償責任が対象なので、故意による事故は対象外です。本人的には故意ではないと思うかもしれませんが、ケンカをして他人にケガをさせた、よっぱらって看板を壊したといったケースは、偶然な事故とはみなされず対象外となる可能性が高いでしょう。
また、仕事に関する損害賠償も対象外です。買い物中に商品を壊してしまったとしても、仕事に関わる事故であれば対象外です。

個人賠償責任保険のように一般的になった保険は、どの保険会社も同じ内容で変わらないと思い込みがちです。ところが、ここで見たように、保険会社によって他人から借りた物に対する補償がついている、ついていない、といった違いがあります。商品名は同じであっても保険会社によって補償内容が異なるだけに、面倒ではありますが、約款の内容を確認した上で加入するようにしたいですね。

情報提供: 家計の見直し相談センター(外部サイト)

ライタープロフィール

藤川太

ファイナンシャルプランナー。山口県出身。慶応義塾大学大学院理工学研究科を修了後、自動車会社で燃料電池自動車の研究開発に従事していたが、ファイナンシャルプランナーに転身し、「家計の見直し相談センター」で生命保険の見直しを中心とした個人向け相談サービスを展開している。同センターは2001年の設立以来30000世帯を超える相談を受けてきた。「分かりやすい、納得できる、利用しやすい」サービスを目指して活動中。 著書に『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』(プレジデント社)、『やっぱりサラリーマンは2度破産する』(朝日新書)などがある。

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