弁護士費用特約って役に立つの?

弁護士費用特約って役に立つの?

私が初めて新車を買ったのは20数年前の若かりし頃です。納車された新車に乗って、ディーラーの周辺を一周したときのこと。ちょうどディーラーの前の信号で止まった時に、後ろから大きな衝撃が。そう、後ろから追突されたのでした。初めて買った車がほんの数分で事故車になった瞬間でした。車が停車していたのでこちら側の過失はゼロのいわゆる「もらい事故」。新車と事故車では価値も違ってきますが、バンパーやリアゲートを交換しただけで、新車に替えてもらうことができませんでした。不満が強いものの、自分で加入している自動車保険では何もしてもらえず、素人では対処できず泣き寝入りとなってしまいました。


もらい事故では自動車保険は役に立たない?

単独事故ではない限り、通常は事故の相手方が存在します。自分と相手の過失の程度によって過失割合が決まります。この過失割合は保険会社が示談交渉した結果、最終的に決まることが一般的です。

ところが、私のように停車した状態で追突された時のような「もらい事故」では、一般的には追突された側には過失がありません。この過失ゼロの事故の場合は、自分が加入している保険会社による示談交渉は行われません。たとえ保険会社に示談交渉をするよう依頼しても、保険会社はどうすることもできません。過失割合ゼロの事故となると事故の相手方への損害賠償責任がないので保険会社は事故とは無関係の立場です。その保険会社が相手方と示談交渉をしてしまうと非弁活動として弁護士法違反となってしまうからです。そのため、私のようにもらい事故であれば、自分自身で示談交渉を行うことが必要となってしまうのです。

保険会社によってはこうしたもらい事故であっても、窓口に相談すればアドバイスしてくれるサービスも行っています。私の事例では、自分も追突した側も双方が同じ保険会社の保険だったので、こうした窓口も機能しませんでした。

こんな時には弁護士費用特約が役に立つ

こんな時には、弁護士に依頼して示談交渉することも考えられます。ところが、弁護士に依頼すると高額な費用がかかるため、二の足を踏んでしまうのではないでしょうか。実際に私もそうでした。

こんな時に役に立つのが「弁護士費用特約」です。保険加入者等が自動車事故や日常生活における事故によってケガや物損の被害を受けたとき、弁護士に依頼して損賠賠償請求を委任する場合の弁護士費用や法律相談費用の全部または一部を補償してくれる保険です。訴訟費用などの弁護士費用を1事故・1被保険者につき300万円まで、弁護士相談費用は10万円まで、と言った形で補償してくれます。弁護士費用保険は損害保険会社から自動車保険の特約として販売されるケースが多い保険ですが、火災保険や傷害保険の特約としても販売している会社もあります。

保険の対象となるのは、記名被保険者はもちろんのこと同居の親族や別居の未婚の子も対象となります。つまり、家族で複数台の車を持っているのであれば、どれか1台の自動車保険に弁護士費用特約を付けておけば大丈夫ということ。自分の自動車保険には弁護士費用特約がついていなくてもあきらめずに、家族の車の自動車保険に弁護士費用特約がついていないか調べてみましょう。さらに言うと、家族間で補償が重なっている可能性もあるので、それぞれの自動車保険を調べてみましょう。

自動車事故だけでなく日常生活事故も補償するタイプも

私の事故の例は自動車事故でしたが、当然ながら日常生活の中でも事故は起こります。例えば、散歩をしていたら他人の飼い犬に突然噛まれた、近所の子どもが投げた石で家が破損した、といったケースです。こうしたケースで弁護士の助けを得たい場合にも弁護士費用保険は助けてくれます。

ただし、弁護士費用保険には「自動車事故のみ」対象となる保険と「自動車事故+日常生活」が対象となる保険があるので注意が必要です。もしも「自動車事故のみ」が対象となっていれば、日常生活における事故で被害を受けたケースでは弁護士費用保険を使うことはできません。ちなみに、日常生活における事故で加害者側となった場合は「個人賠償責任保険」が助けてくれます。こちらも加入しているかどうか確認してみましょう。

  弁護士費用保険のタイプ
自動車事故のみ 自動車事故+日常生活
自動車事故で
被害を受けた場合
自動車事故以外の日常生活での事故で被害を受けた場合 ×

弁護士費用特約は使えるなら躊躇なく使おう

自動車保険は使うと等級が下がり翌年以降の保険料が上がってしまうと考え、保険を使うことを躊躇する方も多いと思います。この弁護士費用特約は使っても次年度以降の等級はさがらないので保険料には影響がありません。使えるなら使いましょう。

弁護士費用特約を使ってどの弁護士に委任するかは自由に選べます。保険会社によっては弁護士を紹介してもらうことも可能ですが、交通事故に強い弁護士を自分で見つけてきても構いません。どちらにしても、弁護士に委任する前、弁護士費用を支出する前に保険会社に連絡し手続きをすることを忘れないようにしましょう。

多くの保険会社は「もらい事故」を強調して販売しているので、過失割合がゼロの場合のみ弁護士費用保険は使えると勘違いされる場合が多いようです。ところが、約款を見てみると「対象事故によって被った被害について、保険金請求権者が法律上の損賠賠償請求を行う場合に弁護士費用を負担したことによって生じた損害に対し」と書いてあるだけだったりします。どこにも過失割合ゼロの場合だけとは書いてありません。極端に言えば相手方に1%でも過失があれば使える可能性があるということです。もちろん使えない可能性もありますので、約款を確認するだけでなく、無料法律相談などを利用して弁護士に使えるかどうか確認するといいでしょう。

情報提供: 家計の見直し相談センター(外部サイト)

ライタープロフィール

藤川太

ファイナンシャルプランナー。山口県出身。慶応義塾大学大学院理工学研究科を修了後、自動車会社で燃料電池自動車の研究開発に従事していたが、ファイナンシャルプランナーに転身し、「家計の見直し相談センター」で生命保険の見直しを中心とした個人向け相談サービスを展開している。同センターは2001年の設立以来30000世帯を超える相談を受けてきた。「分かりやすい、納得できる、利用しやすい」サービスを目指して活動中。 著書に『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』(プレジデント社)、『やっぱりサラリーマンは2度破産する』(朝日新書)などがある。

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