はやりのキックボードに乗る際に入るべき保険は?

このコラムは一般的な情報をご提供するものであり、当サイトの保険のご加入をお勧めするものではありません。

はやりのキックボードに乗る際に入るべき保険は?

近年、キックボードで移動する人が増えています。以前は、子どもが乗って遊ぶイメージがありましたが、モーターのついた「電動」キックボードが登場したことで、最近は通勤などの移動で使う大人も多くなりました。自転車やオートバイと異なり、コンパクトに畳むことができるためキックボードを抱えて電車に乗っている人も見かけます。

キックボードが流行すると目立ち始めたのが、危険な運転をする人たち。特に電動キックボードはスピードが出るようで、私も歩行中に何度か接触しかけヒヤリとしたことがあります。もしも、キックボードで事故が発生したらどうなってしまうのでしょうか。

電動キックボードは車両としての扱い

電動キックボードは遊具ではありません。現状の道路交通法上では「原動機付自転車」相当の車両です。そのため、乗るためには運転免許が必要です。また、ヘルメットの着用が義務付けられており、ナンバープレートも必要です。この点から見ても、子どもが遊ぶための乗り物ではなく、人や物を運ぶ「車両」であることを認識することが必要です。

2022年4月に電動キックボードを免許なしで乗れる道路交通法改正案が可決されました。これにより、最高時速20km/h以下の電動キックボードについては「特定小型原動機付自転車」という新しい分類となり、運転免許なしでも乗れるようになります。さらに、ヘルメットをかぶることも義務ではなく努力義務となります。

実はこの改正法は2年以内を目途に施行とされているので、まだ先の話です。ただ、すでに限定的ではありますが規制緩和されています。現在でもシェアサービスの電動キックボードは「新事業特例制度」によりヘルメットなしで乗れています。

事故件数はまだ少ないが多くの交通違反者が

一方で、キックボード自体が遊具というイメージが強いせいか、軽い気持ちで電動キックボードに乗っている人が多いのが実態です。時折、街中でナンバープレートもつけず、ヘルメットも着用せずに電動キックボードに乗っている人を見かけますが、現状では交通違反に問われる行為です。警察庁の発表資料によると2021年9~12月に検挙された電動キックボード利用者による交通違反は全国で304件にも上りました。そのうち、整備不良や無免許運転で6割を占めています。

2022年2月に警視庁が発表した2021年の統計によると、2021年に発生した電動キックボ ードが関与する交通事故は27件。うち20件が東京都で発生しています。負傷者数も28人出ています。2021年の全国の交通事故件数は30万5196件でしたから、まだまだほんのわずかと言ってもよい数です。とは言え、事故当事者となったらそうは言っていられません。昨年の事故の中には重傷事故もあり、電動キックボードでも重大事故は発生しています。

電動キックボードも車両である以上、事故の加害者になる可能性もあります。電動キックボードはスピードが出るため、大きな事故につながるリスクも高い乗り物という認識を持つべきでしょう。

自賠責保険への加入義務がある

近年、自転車が関係する人身事故で、加害者となった運転者に対し1億円近い賠償責任が問われる判決も出ています。電動キックボードでも、重大な事故を起こせば人生が終わりかねないほどの多額の賠償責任を負うことになりかねません。

現状では電動キックボードは原動機付自転車相当の扱いなので、自動車や原動機付バイクと同様に自賠責保険(共済)への加入が必須となっています。自賠責保険に加入していなかった場合には罰則があり、①6か月以上の免許停止(反則点数6点)と②1年以下の懲役または50万円以下の罰金、の両方が課せられます。電動キックボードに乗るなら「必ず」自賠責保険に加入しましょう。

電動キックボード用の自賠責保険は原動機付自転車用の自賠責保険でOKです。電動キックボードの販売店や保険代理店ではもちろん、コンビニやインターネットからも加入できます。保険料は保険期間1年で7,070円です(2022年6月現在、沖縄除く)。

ちなみに、改正道路交通法が施行され特定小型原動機付自転車扱いになっても、自賠責保険への加入義務は引き継がれます。「特定小型」とついても原動機付自転車には変わりがないということです。また、引き続き軽自動車税もかかりますので、ナンバープレートも装着する必要があります。

法改正後はこう変わる

  改正前 改正後
車両種類 原動機付自転車 最高速度20km/h以下など一定の条件を満たすことで「特定小型原動機付自転車」
運転免許 原動機付自転車を運転できる免許が必要免許不要 免許不要
※16歳未満は乗車できない
ナンバープレート 必須 必須
自動車税 軽自動車税 軽自動車税
自賠責保険 必須 必須
ヘルメット 必須(一部例外あり) 努力義務

自転車保険では電動キックボードは補償されない

自賠責保険は交通事故による被害者を救済するために法律で加入を義務付けられた強制保険です。補償内容は被害者死亡時最高3000万円、後遺障害時最高4000万円。一見十分な補償に見えるかもしれませんが、最近の自転車事故でのケースを考えると、最低限と言ってもよいレベルのものです。自賠責保険では補償しきれない高額な賠償に備え、任意保険にも加入しておきましょう。

全国で自転車保険への加入の義務化が進んでいるので、個人賠償責任保険に加入している人が増えています。もしかすると、この個人賠償責任保険に加入していれば十分と考える人もいるかもしれません。実は、個人賠償責任保険の契約内容が記載された約款には「保険金を支払わない場合」の項目の一つに「船舶(ヨット、モーターボートおよびボートを含みます)、飛行機、自動車、自動二輪車(自転車など主動力が人力であるものを除きます)、銃器(玩具として使用する空気銃を除きます)、昇降機の所有、使用または管理に起因する損害賠償責任。」と一般的に書かれています。つまり人力で走るキックボードでの事故は補償の対象でも、電動で動くキックボードは補償対象外となるということ。電動キックボードに乗るなら、別の保険に加入する必要があるのです。

原付バイク用の保険に加入しよう

ニュースを見ると電動キックボード用の保険の開発を進めている保険会社があるようですが、現状では販売されていません。そのため、原動機付自転車用の保険(原付保険)か、自動車保険にファミリーバイク特約を付加することが必要になります。原付保険もファミリーバイク特約も対人賠償は無制限で補償されるので、加入すれば補償内容は十分です。

原付保険には保険代理店でも加入できますが、インターネットから加入することもできます。自賠責保険と異なり任意で加入する保険なので、保険会社や補償内容等によって保険料が異なります。複数社の見積もりを取り、比較検討するとよいでしょう。

自動車を保有している人であれば、加入している自動車保険に「ファミリーバイク特約」を付加することで割安に補償を確保できます。ファミリーバイク特約の補償対象は125㏄以下のバイクが対象で電動キックボードも含まれます。何台あっても対象になりますし、他人から借りたバイクや電動キックボードも対象になります。

また、「ファミリー」と名称についているように、自動車保険の記名被保険者以外の家族も補償の対象となります。一般的には配偶者や同居の親族、別居の未婚の子まで範囲となります。

規制緩和されることが決定し、これから利用しやすくなる電動キックボード。手軽に利用できる乗り物なので、近距離での移動に利用する人は増えていくでしょう。一方で、重大な事故も増えていけば、社会問題化する恐れもあります。電動キックボードに乗ることを楽しみたいなら、利用者の責任として自賠責保険への加入はもちろん、任意の保険にも加入するようにしましょう。

情報提供: 家計の見直し相談センター(外部サイト)

ライタープロフィール

藤川太

ファイナンシャルプランナー。山口県出身。慶応義塾大学大学院理工学研究科を修了後、自動車会社で燃料電池自動車の研究開発に従事していたが、ファイナンシャルプランナーに転身し、「家計の見直し相談センター」で生命保険の見直しを中心とした個人向け相談サービスを展開している。同センターは2001年の設立以来30000世帯を超える相談を受けてきた。「分かりやすい、納得できる、利用しやすい」サービスを目指して活動中。 著書に『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』(プレジデント社)、『やっぱりサラリーマンは2度破産する』(朝日新書)などがある。

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